魂の色
「心を取り戻すって色々なものを抱えて生きることなのね。 自分の裡にある醜い感情や後悔や罪悪感や、それに反応する悲しみや怒りも 引き受けて離さないことが大切だったのにね。 それらを切り捨てると軽くなるのではなく、人は鈍くなる。 自分の痛みも。他人の痛みも。でもわかって良かった。 だってこの重みが、心があるという実感だものね。まだこの状態を始めた ばかりだから楽しいとは言えないけど、少なくとも喜ぶわ。 今私幸せなんだと思う。他人の言う幸せな形ではないけど、 私だけが理解して決められる幸せよ。間違いなくこれは私のもの。 そして二度と自分に油断しないわ」
-本文より抜粋
(著者コメント)
日常の何かを小説に書きたいと、短編を初めて書いてみたのだが、長編と違って短いストーリーの中で人の心を表現するのは簡単ではなかったけど、生活の中にもこんなに心動かすものがあることを語りたかった。 人は特別ではなくても、平凡な暮らしの中でも、生きる目的がわからなくても、あきらめる必要がないと、平凡で普通の主婦である主人公が描かれていると思う。初めは少し暗く、引っ込み思案で、自信のなかった房江が、変化していく度に段々と魅力的に見えてきた。自分で書いていても、それが不思議に思え、自分ときちんと向き合おうともがき苦しむことは、人を魅力的に変えてくれるのだと実感する。心を見失い取り戻すことは簡単ではないけど、不可能ではない。 心でちゃんと楽しめる人は、すでに特別な存在だ。この本を読み、特別な存在になれたのなら、もう誰もうらやむ必要のない人だと思います。
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